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生活介護編

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生活介護事業所での実践事例です。特別支援学校を卒業した後の運動量の低下という共通課題に対し、リハビリの視点を組み込みながら、多くの職員が無理なく運用できる仕組みづくりまで——2つの事業所の知見をまとめました。

施設プロフィール(2事業所の例)

  • 入所・通所の身体障害/重症心身障害の施設(区分6の最重度の方が多い。20〜80代、平均56歳)
  • 生活介護事業所(定員40名/契約56名。18〜60歳、平均35歳。身体・知的・精神)
  • いずれも午前は生産活動など、午後にリハビリ・余暇活動。リハビリ専門職(OT等)が関与

導入のきっかけ:卒業後に運動量が落ちる

特別支援学校を卒業すると、まず起きるのが運動量の低下です。スポーツセンターやウォーキングなどの機会はあっても、利用者数が多く参加は月1〜2回が限界。近年の猛暑で、6〜10月は屋外活動が中止になり、さらに運動量が落ちます。そんな中、自治体のプロジェクトでデジリハを知り「暑い時期でも体を動かせる」「デジタルならではのリハビリができる」と導入を決めました。

リハビリ視点での使い分け(ねらい別)

ねらい工夫のポイント
立位バランス・抗重力忍者でドロン(HOKUYO)+立位台補助で立位を取り、骨・筋へ荷重。関節のストレッチにも
座位バランス・体幹前傾してリーチボールを手前に置いて自分で取る→体幹を前傾させる
上肢・可動域 → ADL手/棒/ボールでタッチ高い位置へ手を上げる→着替え・食事の可動域維持
運動量の確保投球(近い/遠い、上手/下手投げ)距離と投げ方で運動強度を調整
見る力(視野・半側空間無視)忍者を目で追う出現を探す、顔を上げて対象を見る
コミュニケーション左右で担当を分ける利用者同士の声かけ・応援が生まれる

「リハビリ」にするための工夫

OTの視点から、ねらいを明確にして使っています。

  • 立位:補助があれば立てる方に立位を促すと、体幹・姿勢の筋力低下や関節拘縮を防ぎ、自分で立つことが関節のストレッチに。荷重が骨の強化にもつながる。
  • 座位:車椅子に座りっぱなしだと腹筋を使う機会が少ない。前に手を伸ばすだけでも腹筋の賦活になり、体幹を前傾できればさらに効果的。難しい方は「首を動かして見上げる」だけでも体幹筋が働く。
  • 上肢:手でタッチ・棒でタッチ・ボールを握るなど、手を動かすことが可動域の維持になり、着替えや食事といったADLに直結する。
  • 運動量:「運動してください」と言われている方に、施設生活で不足しがちな運動量を確保する手段として有効。パーキンソン病の方には、視覚・聴覚の手がかりで動くことがリハビリの基礎になり、疾患別にも有用。
  • 脳の活性化:「左にタッチする時にわざと右手で」など、一旦考える課題にすると認知面の賦活にも。

“ゲーム遂行”の裏の運動を見る:ボールを取る動作にも運動が伴います。つい手渡してしまいがちですが、利用者の手の届く範囲に置いて「自分で取る」設定にすると、体幹前傾という副産物の運動を促せます。

「全員に効く」より、個別支援計画と一緒に

導入を検討する事業所からは「その人に合うアプリをどう探せばいいか」という相談がよくあります。これに対する答えは——

アプリを探すより、「その方が何ができるか」+「どこへ向かうか(維持・向上)」を、個別支援計画と一緒に考えるのがいい。歩ける人は歩行の維持、座れる人は手の可動域の維持。生活で使う頻度が少ない動き(着替え・入浴など)こそ、ゲームで可動域を保てると、苦痛なく生活動作が続けられます。 — 運用するOT

なお、生活介護では「運動したくない」という方の意思も尊重し、希望しない方に強制はしていません(利用は半数ほど、頻度は1人あたり月1〜3回)。

多くの職員が使えるようにする 学び合い

担当者1人では全利用者に提供しきれません。「自分が入らなくても回る」ことを目指した工夫が要になります。

  • アプリを絞る:まずは「忍者でドロン」1本に固定。誰もが一度はやったことのある“ワニワニパニック”のような直感的なアプリで、職員に操作を慣れてもらう。慣れたら徐々に他のアプリへ。
  • 写真付きの立ち上げマニュアル:電源ボタンの位置から、アプリ起動、センサーの絞り込み、シャットダウンまでを写真で。パソコンが苦手な職員や、久しぶりの職員でも再現できる。
  • 記録ファイル:「参加回数」と「個々の記録(個人目標・使用アプリ・設定範囲)」を分けて管理。細かすぎると見づらいが、記録がないと次につながらないため、半年ごとに様式を見直して項目を絞る。

運用を軌道に乗せる4ステップ

もう一つの事業所では、設置から本格運用まで段階を踏みました。

ステップ内容
① 職員で遊ぶ(1か月)「当日やり方が分からない/何のアプリがあるか分からない/イメージが湧かない」を防ぐため、まず職員がたくさん触る
② イメージを膨らませて遊ぶ(1か月)遊びながら「このアプリはあの利用者さんに合いそう」と会話が生まれる
③ グループ分け(1か月)56名をどう運用するかグループ化
④ デジリハ班の発足担当者だけでなく、職員メンバー数名で運用を回す体制へ

グループ分けの落とし穴:最初は「利用曜日」と「相性」で分けましたが、それだけだと目的が見えず「デジ“ゲー”」になりがち。そこに訓練士の視点(可動域維持・上肢・集中力・体を動かす・巧緻性 という機能の5項目)を組み込んで分け直すと、「何のために動かすか」が明確になりました。

運用上のリアルな課題

  • 動線:2階の活動場所から1階のデジリハルームへ移動する手間。利用者は「特別感」で喜ぶが、職員には繰り返しが負担に。
  • 部屋:もともと利用者が入る想定でない部屋は入口・通路が狭く、車椅子によっては入れず利用者を選んでしまう。
  • 予約:複数事業所が同居する建物では、会議・来客・クールダウンなどで部屋の予約が取りにくい。

奥まった一室で利用が伸びなかった施設が、別施設の「廊下に置いて通りがかりにやる」方式を真似たところ、利用者が増えた、という共有も。「導線で面倒になる」負担と「やりたい」気持ちのどちらが勝つか——設置場所は活用の成否を大きく左右します。

評価とフィードバック

現状は数値評価(バランス評価バッテリー等)までは難しく、行動観察によるスクリーニングが中心。たとえば立位は「最初は後ろで構えながら、大丈夫そうなら少しずつ介助を減らす」という形で、ベッタリ介助から1〜2m離れても大丈夫なところまで変化を追います。半年ごとに記録様式を見直し、個別支援計画の際に担当者が1年分をまとめてフィードバックしています。

この事例から学べること

  • 生活介護では、まず「卒業後の運動量低下」という共通課題に照準を合わせると導入の意味が明確になる。
  • 「アプリ探し」より、個別支援計画と一体で「維持・向上」を設計する。
  • 多職員運用の鍵は、アプリを絞る・写真マニュアル・記録様式の3点。
  • グループ分けは「曜日・相性」+機能のねらいで。これがないと“デジゲー”化する。
  • 設置場所(動線・広さ・予約)は、活用が続くかどうかを左右する現実的な要素。

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