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発達障害編

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児童発達支援センターでの実践事例です。「楽しい」「楽しそう」が目に見えて分かることを入り口に、苦手なことへの取り組みや、集団でのソーシャルスキルづくりへと広げています。「誰がどのデジリハをできるか」ではなく、苦手な子のやる気をどう引き出すか——その選択肢の一つとしての使い方が詰まっています。

施設プロフィール

  • 種別:児童発達支援センター(定員1日30名・機能型/通所150名ほど)
  • 対象:2〜6歳未満が9割。ADHDや未診断、IQの高いお子さんから幅広い特性まで
  • 体制:PT・OT・ST・心理士・保育士。個別・集団の両方で活用

環境設定の工夫:集中を妨げない部屋づくり

プロジェクターでデジリハ専用の部屋を用意。ポイントは、パソコンを部屋の外に出していること。パソコンが視界にあると、お子さんの目がそちらに向いてしまうためです。コードを部屋の上に這わせてプロジェクターへ接続し、操作はリモコン型のワイヤレスマウスで行います。これにより、画面(壁)だけに注意が向く環境をつくっています。

センサー・アプリの使い分け(ねらい別)

ねらいアプリ/センサー工夫のポイント
因果関係・最初の一歩空の水族館(HOKUYO)好きな題材(車など)。本人が触るまで消えない設定
共同注意・指差しHOKUYO+声かけ後ろから声かけ→振り返りを引き出す
書字・力の調節「混ぜると変わる」/なぞり書きダンボール型抜きの視覚ガイド、液量で形を残す
記憶・注意忍者でドロン出現位置を覚えて並び替え。3人出る設定、秒数を調整
動きの抑制(コントロール)Moff反応させないようゆっくり。残ポイントを記録
身体の後方認識(ADL)Moff+フラフープ後ろに手を回す→お尻を拭く等の動作へ
音量・発声内蔵マイク「小さい声で」。発声が難しい子は楽器・笛で

「楽しい」が苦手への入り口 主体性

デジリハの大きな利点は、「楽しそう」が目に見えて分かる教材であること。だからこそ、机上学習のような苦手感のあることにも取り組めるのだと言います。お子さんの見立てをした上で、職員の工夫・ひらめき次第でいろいろな対応ができます。

大切なのは発想の順序。「誰がどのデジリハをできるか」ではなく、「苦手な子のやる気を引き出すには何がいいか」。その選択肢の一つとしてデジリハがあり、絵本やほかの教材があってもいい。どんな使い方で、どの子のどんな能力が育つかを考えると、活用の幅が一気に広がります。

共同注意と意思表示が芽生えた事例 関係性 主体性

療育手帳A1のお子さん(2年生)の事例です。車が大好きなのに、触った意識も目線も追いついていない状態でした。最初は1歩も出なかったのが、好きな車の出る「空の水族館」を続けるうちに——少し歩けるようになり、場面によっていろいろなものに気づいて自分で動くように。できることも「空の水族館だけ」から「忍者」へと広がり、行動範囲も広がっていきました。

工夫の一つが、忍者を「消えない設定」にしたこと。見ているだけで満足してしまいがちな本人が、自分で触るまで忍者が続くようにしたのです。最初は真ん中の4つしか触れなかったのが、移動して触れるようになり、後半になるほど反応が速くなっていきました。

学校では、指さした方向への反応や共同注意の様子は見られませんでした。それが、デジリハの場面で初めて、指差しからの「あれ見てね」が成立し始めたんです。名前を呼んでも振り返らず、目線も合わなかった子が、後ろを振り返ってお父さんの声かけに反応するようになってきました。 — 担当者

なぜ大事か:指差しの先を一緒に見る「共同注意(三項関係)」は、ことばやコミュニケーションの土台です。それが「今まさに獲得し始めている」場面をつくれていることに、大きな意味があります。

なぞり書き・机上課題への展開

言葉の表出・理解が難しいお子さんには、視覚的な手がかりを足して取り組みます。

  • ダンボールの型抜き:形(テレビ画面のような四角など)をくり抜いたダンボールをプロジェクターの前に置き、視覚ガイドにしてなぞり書き。
  • 「混ぜると変わる」で量の調節:液体の量を調節することで、最後に形が残る。ゆっくり書く・力を調節するのが苦手で、つい一筆書きで下から書こうとする子に、可動を意識した指導を重ねる。
  • 座位保持具の上で机上課題:姿勢を整えた状態で学習課題に取り組む。
  • 記憶・並び替え:デジリハ画面を印刷して間違い探し。忍者の出現位置を覚えて並び替える記憶課題(3人出る設定、秒数調整)で、記憶と位置の練習に。

なぞり書きでは、矢印が「三角と四角でできている」と気づいたことをきっかけに、部首や漢字も同じように覚える支援へ発展し、漢字が覚えやすくなった例もありました。

逆転の発想:「ゆっくり動かす」練習

動きの激しいお子さんには、「速く動かす」のではなく「反応させないようにゆっくり動かす」コントロール練習に使います。Moffを持ってゆっくりサーキットし、最後にガタンと置かないように。残ったポイント(10点から何点減ったか)を記録して、成果を見えるようにしています。

現場で使う「付属グッズ」の工夫

グッズねらい
フラフープ体の真ん中に入って後ろに手を回す→身体の後方認識。「お尻が拭けない」などADLの土台に
100均の卵おもちゃ「飛び出せベイビー」と連動。割る位置を意識する微細運動+因果関係
手作りロケット(輪ゴム)両手で飛ばして空の水族館・忍者へ。左右の手の協調
ダンボール型抜き・なぞり書き台紙視覚ガイド。書字・形の認識

集団での工夫と待ち時間対策 関係性

集団は1回4〜6人、年長・年中・年少・特性別の異年齢など。ほぼ全アプリを使いますが、同じ使い方はほとんどしないのが特徴です。グループの課題(ソーシャルスキル等)に合わせ、「どのアプリを使うか」「どうやったら楽しいか」を職員と子どもで一緒に考える仕組みから始めます。年齢で難易度を調整(道具を先生が出す/自分で椅子を踏み台にして届かせる、など)。

待ち時間を減らす工夫

  • 「忍者でドロン」の秒数を短くし、1人のタッチ回数を少なく。「何人分待てるか」をスモールステップで増やし、待てる人数を評価指標にする(5人分→10人分)。
  • 「合法的な離席」:終わった子が元の席に戻るのではなく、隣の椅子に詰めて移動する/シールを取りに行く。座りっぱなしの時間を、仕組みでリセットする。

リーチの介助:どこまで支える?

「手を伸ばす時にどこまで介助するか」は、よくある相談です。理学療法士の視点から、次のように考えます。

  • 介助のしすぎ・しなさすぎのバランスが難しい。まず「なぜ伸ばしにくいのか」を考える。
  • 座位を保つこと自体が難しいなら、まず座位の安定から。肩甲帯の安定が課題なら、脇の下に手を添える。
  • 腕を下から支えない(寄りかかってしまうため)。上から誘導するのが望ましい。
  • 保育士・教員は人の体を触る機会が少なく「落としそう」と感じることも。大人の手で支え方を練習する、スリングで腕の重さだけ取る、なども有効。

現場の工夫力を育てる 学び合い

導入時のいちばんの工夫は——まず大人がとことん遊び直したこと。「こうしたら楽しい」を自分たちで体験することが、アイデアが次々生まれる現場をつくりました。さらに初期研修では、ある1人のお子さんを想定し「どのアプリを、どんな設定(背景・音・秒数)でやるか」を、見学のあとに職員で話し合う場を設定。これにより、職員が「このお子さんにどんな配慮をするか」を自分で考えられるようになったと言います。

導入を検討中の方へ:最初は「こういう使い方でこの能力が伸びる」という指標を、ユーザーカフェやデジリハの担当者に聞いてみるのがおすすめです。そのうえで、デジリハに限らず「この道具でどんな能力が伸ばせて、どんな遊び方があるか」を考える癖をつけると、施設全体の支援力が上がります。

この事例から学べること

  • 環境を「画面だけに注意が向く」よう整える(PCを視界の外へ)と、集中が大きく変わる。
  • 「消えない設定」などアプリ設定の小さな工夫が、本人の能動的な一歩を引き出す。
  • センサーは身体の課題(後方認識・力の調節・抑制)に合わせて選ぶと、ADLや学習につながる。
  • 集団は「待ち時間をどう設計するか」が成否を分ける。待てる人数の伸びも立派な成果。
  • 現場の工夫力は、まず大人が遊び直すことから育つ。

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